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発達障害者を社会面・職業面から支えたい

発達障害者と職業

発達障害の人が悩む問題の一つに、職業と生活の問題があります。このHPでは、発達障害の人の職業問題に焦点を当て、社会的な側面から必要な支援事業の改善の課題と障害が持つ人の転職・就職など職業面での支援を取り扱います。

発達障害者の中には、年少期の学習困難による発達不足がハンディになり、それが差別や排除の原因となり、社会関係の構築がうまくいかなかったり、そのことで心を傷め鬱になるなどの追加的な困難を持つ場合があります。

しかし、成長期に適切な環境を整えて成長しやすい配慮をすること、また成人しても、適切な職場環境が保障されるならば、困難はずいぶん軽減できるものです。

私たちは、そのような社会環境を作っていくことが必要です。それと同時に、社会環境の改善を待つだけでなく、当面、働きやすく適度な所得を得るための手立てを提供するという課題は、私たちが担うべきもう一つの課題だと思います。

私は、長年、学生を社会に送り出す立場にあり、そのような、障害を含めた進路相談をし、また卒業生とも障害に関する現状・困難・改善課題について話してきました。

また、私の家族や知人にも発達障害やその他の精神障害で悩む人たちがおり、その悩みや希望に応えられる社会環境作りに取り組んできました。

そこで、発達障害者をめぐる情況を考え、より適切な手段を考えていきます。

A君が置かれた状況と改善の課題

私の知人のA君は、政治・経済・社会についての学習意欲が旺盛で、社会科学についての知識、知的関心を持ち、正義感が強い、温厚な人物です。社会的関心を持ってニュースを見たり聞いたりし、深く社会を考え、自分の世界観を育てようしています。かなり知的な生き方をしていると思います。

しかし、彼は子供の頃から発達障害を持ち、そのことから対人関係ではトラウマを持ってきました。そして、友人関係が作れず、その理由を自分のせいだ思っています。

彼は、障害者と認定され作業所で働いています。その仕事の中身は単純な労働の繰り返しです。そのような単純な労働の繰り返しは、ADHDである彼には合わない内容のようです。

どうしても集中が落ち、他の人より作業が遅くなってしまいます。学生時代のアルバイトや職業の実習訓練で、彼はときどきそのような指摘を受けてきました。そのことが、彼が自分自身を人並みの労働をすることができない人間だと萎縮させています。

転職を考えようにも、自分は、人間関係と職業そのものに対応出来ないと思い、他の職業を探し、新たな一歩を踏み出すことを考えられず、勇気もでない情況です。

“Windows95のスペックの上に、最新式のOSがインストールされている”

彼は、「Windows95のスペックの上に、最新式のOSがインストールされている」と、評されていると笑います。高度な思考ができるけど、それを続けるキャパシティがないというのです。

しかし、高度な思考をする時間の後、適度な休息をとり、その後で高度な思考をすることを繰り返せば、多くの人ができない仕事をやりきる可能性があります。

それが活かされないのは、彼自身にとっても、社会にとっても大きな損失だと思うのです。
目先の利潤追求ではなく、そのような人々の中に眠っている本当に力を発揮させることで、社会全体の生産力を高めることが可能だと思います。

目次

現在の就業移行支援について

ADHD障害と障害者年金

ADHD障害のある人にとって、ADHDによる仕事に関する悩みと併せて重要なのが、自分の生活のための収入を得る悩みです。

ADHD障害のある人が、精神障害年金を申請してそれが認められると、障害年金が受給されます。(発症以降の申請前の期間の最大5年間の年金が支払われますから、障害年金の申請で、400万円を超える年金が支給される場合があります。)

障害年金の年額は、比較的重度な障害等級1級で97万円余り、軽度な障害等級2級で78万円程度です。しかし、この金額で生活するのは困難です。そのため就労の機会を得て、追加的に収入を得ることが重要です。

障害者支援施設

全国地域生活支援機構によると、精神障害のある方を支える社会福祉施設等には、障害者支援施設等と障害福祉サービス事務所があります。(https://jlsa-net.jp/sei/seishin-sisetsu/)

障害者支援は、主として、障害者の生活全般にわたる支援で、障害福祉サービスは、その一部を担っていたり、就業のための支援をしていたりします。ここでは、就労支援のうち、日常的な就労が継続的に行えるために必要な知識および能力の向上のために必要な訓練やその他の支援をおこなっている就労継続支援事業についてお知らせします。

この施設は、障害の重さによって就労継続支援(A型)事務所と(B型)事務所に分かれます。

A型事務所

A型事務所では、一般企業などでは就労が困難であっても、環境次第では継続的な就労可能な障害者向けの事務所です。この制度の下では、当該事務所において障害者が事務所との間に雇用契約を結び、契約基づいて生産活動がおこなわれ、そのための訓練や支援を受けます。

ここでは、障害者は、勤労者として労働基準法の対象となり、最低賃金以上賃金の支払いが保証されます。また、法令に基づいて、雇用保険や社会保険等も適応されます。

※ 就労継続支援A型事業の賃金及び工賃の支払い等について(指定基準第192条)

B型事業所

B型事務所では、A型事務所での継続的な就業が困難な障害を持つ人への訓練・支援が行われます。

例えば、精神障害を持つ人が、症状によって出所して作業を行うことができないといったことがあります。このような情況が続き、継続的な就労ができないといったケースに対応するものです。

このような場合は、B型事業所の利用者は労働者とはみなされず、雇用契約が結ばれません。利用者は、労働基準法の対象にはならないため、最低賃金制度の適応を受けません。そのため、B事業所の利用者には賃金が支払われず、その代わりに工賃が労働の対価として支払われます。

所得の水準

施設種別 就労継続支援A型事務所 就労継続支援B型事務所
平均工賃(賃金) 月額 79,625 円 15,776 円
時間額   899 円   222 円
施設数 3,767 13,441

厚生労働省:障害者の就労支援対策の状況(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html)

A型事務所で就労した場合、作業時間にもよりますが、最低賃金以上の賃金が作業時間に比例して支払われることが保証されています。

しかし、1日の作業時間が4時間という事業所も多いという報告がされています。この理由のひとつは、働く時間が週20時間を超えると、雇用保険の対象となることです。

また、月内就業日数は、8日の休みをとることになっています。したがって1ヶ月は、2月で20日、31日ある月で23日です。

これに対して、B型事務所では、工賃が低く、また、就業時間も不安定であるため、所得水準は劣悪です。

2020年の厚生労働省の資料によれば、A型事務所では労働基準法の対象であるとみなされる利用者の平均賃金は月額79,625円です。そうはみなされない、B型事務所での平均賃金は15,776円です。B型事務所の工賃は、現状では、一月当たり3,000円を下回ってはならないという規定のみで、時間単価は222円という低さです。

ワーキングプア水準を超えた就業支援と所得を保障する必要性

以上より明らかなのは、障害保険を受け就労支援で賃金(工賃)を受けても、その所得は、ワーキングプアレベルであるということです。
さらに、公共料金、社会保障費、税金が追い打ちを欠けます。

特に就労困難なB型の生活支援を考えるとと、実行可能な労働の成果で生計を賄うという方法ではなく、人間の尊厳ある最低の文化水準を保証するレベルの生活費の給付を前提とした所得保障制度が必要とされているのは明白です。

ナショナル・ミニマムあるいはリビング・ウェイジ(生活できる賃金)のような社会保障全般の考え方の転換や、最低賃金水準の大幅引き上げと、そのための議論を積み重ねていくことは私たちの社会の中で取り残された人を作らないための急務の課題です。

このサイトはそのような世論を形成することをサイト自身の課題だと思っています。

※発達障害者の当面の就業支援手段として

このサイトは、障害者をめぐる社会的課題について検討するとともに、当面、就業状況の改善によって、発達障害の人の当面の生活状況を改善するための就業・転職関連の情報の紹介もしています。

エージェントを利用した精神障害者の適職探しについては、下のボタンを参照してくださいい。

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この記事を書いた人

鹿児島国際大学大学院兼任教授
元鹿児島県立短期大学教授 専門は労働経済・社会政策
鹿児島医療生活協同組合会長理事
社会科学研究室ソシラボSoscilabo代表

人々が人間らしく働く機会を保証し、豊に生活する社会作りに貢献したいと思います。このサイトでは、精神的な障害を持つ人々を支援するための、社会改革と就業支援を中心に、障害を持つ人々のお役に立つ情報を発信したいと思います。

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